売上管理や在庫管理など、店舗経営に欠かせない設備の1つがPOSレジです。しかし、導入するには数十万円の費用がかかります。
小規模店舗や個人店舗で、設備に費用をかけることが難しく、POSレジの導入に踏み切れずにいる方も多いのではないでしょうか。
そのような場合におすすめなのが、補助金・助成金制度を活用する方法です。
今回は、POSレジの導入時に活用できる補助金・助成金制度を5選紹介します。制度ごとの詳しい支給金額や申請要件についても解説していますので、ぜひ参考にしてください。
POSレジの導入に利用できる補助金・助成金について
補助金・助成金とは、国や自治体が提供している起業者や中小企業の経営支援を目的とした補助事業です。POSレジの導入に活用できる制度もあります。
補助金は、国や自治体が目指す社会環境の構築やビジョンの達成に向けて、尽力してくれる企業をサポートする制度です。一方で、助成金は、働き方改革や雇用環境の是正を推進する企業の支援を目的として運用されています。
どちらも、返済不要で利用できる給付型の支援金制度です。しかし、申請には要件があるため、申請要件を満たしていない場合は利用できません。支給を受けられるケース、受けられないケースを知っておくことが大切です。
POSレジの導入に利用できる補助金・助成金制度5選
ここからは、POSレジの導入に利用できる補助金制度・助成金制度について解説します。制度ごとに申請要件なども異なるため、申し込む前に必ず確認しておきましょう。
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、頻繁に実施される制度変更への対応強化を目的として、導入したツールや設備に適用されます。中小企業や小規模事業者が対象の補助金です。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金のことを指します。
例えば、生産性を向上させるためにPOSレジシステムを導入した場合が補助の対象です。また、セルフレジや自動釣銭機、自動精算機などの設備投資を行った場合も補助の対象になります。
適用条件 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|
従業員 5人以下 | 1/2 (小規模企業者・小規模事業者・再生事業者は2/3) | 750万円 |
6人~20人 | 1,000万円 | |
21人以上 | 1,250万円 |
※製品・サービス高付加価値化枠の補助率
ものづくり補助金は、単価が50万円(税抜)以上する設備の導入を行った場合に活用できる制度です。支給されるか否かは、審査での判断となります。そのため、単価50万円以上のPOSレジを導入していても、審査次第では支給対象とならない場合もある点に注意しましょう。
また、中小企業で生産性向上や業務効率化を目的として、POSレジやセルフレジ・自動精算機を導入するケースでは「中小企業省力化投資補助金」の利用も可能です。
ものづくり補助金と比べて、補助金額の上限が低いという特徴があります。ものづくり補助金の申請要件が満たせていない場合に、活用を検討してみると良いでしょう。
参考サイト:ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
IT導入補助金
出典:IT導入補助金
IT導入補助金とは、企業の経営課題を解決する目的でITツールや関連設備を導入した際に補助金が支給される制度です。業種を問わずさまざまな企業で利用できます。
機器の導入には「デジタル基盤導入型」、クラウドサービスなどITツールのみの導入であれば「通常型」の支給対象です。
例えば、店舗経営における売上分析や従業員の勤怠管理を行うために、POSレジを導入したケースなどが該当します。POSレジ以外にも、セミセルフレジや発券機・券売機、自動精算機などでも活用することが可能です。
適用条件 | 補助率 | 上限金額 |
---|---|---|
ソフトウェア導入費 | 3/4以内 (小規模事業者は4/5以内) | 50万円 |
ソフトウェア導入費 (50万円超の部分) | 2/3以内 | 50万円〜350万円 |
ハードウェア購入費 | 1/2以内 | PC・タブレットなど:10万円 発券機・レジなど:20万円 |
IT導入補助金には、通常型とデジタル基盤導入型があり、上記の表はデジタル基盤導入型の補助率です。通常型の場合は、課題解決のプロセス1つ以上で50万円~150万円以下(補助率1/2以内)が支給されます。
また、4プロセス以上の課題解決につながる設備類を導入したケースでは、150万円~450万円以下が補助上限額です。
POSレジの導入にあたり、IT導入補助金の利用申請を検討している場合は、補助金申請をサポートしてくれるIT導入支援事業者に依頼するのも良いでしょう。
参考サイト:IT導入補助金
インバウンド対応力強化補助金
インバウンド対策のためにPOSレジを導入する場合は、インバウンド対応力強化補助金が利用できます。ただし、補助金対象となるのは、東京都内の宿泊施設や飲食店、免税店、体験型コンテンツ提供施設などです。
多言語対応のPOSレジのほか、多言語案内表示板の設置やパンフレットの多言語化、公衆無線LANの設置なども支給の対象になります。
補助率 | 補助対象経費の1/2以内/1店舗あたり |
補助限度額 | 上限 300 万円(公衆無線 LAN の設置を除く)/1店舗あたり ※公衆無線LANの場合 設置数(1施設あたり上限10か所)×1万5,000円か、補助対象経費の1/2のいずれか低い方の金額 |
<補助対象事業者>
- 都内において旅館業法の許可を受けて「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」を行う施設
- 都内の飲食店、免税店(中小企業者のみ)
- 都内の体験型コンテンツ提供施設等(中小企業者のみ)
- 都内において観光周遊及び空港アクセス等の事業を行う観光バス事業者
- 外国人旅行者の受入対応に取り組む中小企業団体等・観光関連事業者グループ
上記に該当する場合は、インバウンド対応力強化補助金が利用できます。
参考サイト:インバウンド対応力強化補助金
働き方改革推進支援助成金
出典:働き方改革推進支援助成金
働き方改革推進支援助成金は、業務効率化や業務工数削減など、従業員の働き方改革を推進する企業のための制度です。
働き方改革推進支援助成金には、推進する改革の内容に応じて以下の4つのコースから選択できます。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
このうち、POSレジを導入するのに利用できるのは、「労働時間短縮・年休促進支援コース」もしくは「勤務間インターバル導入コース」です。
ただし、働き方改革推進支援助成金が利用できるのは、労働災害補償保険の適用対象となる中小企業の事業者のみとされています。中小企業の定義については、業種によって要件が異なるため事前に確認しておきましょう。
給付を受けるには、POSレジの導入によって業務効率化を実現する必要があります。具体的には、時間外労働時間を80時間以下もしくは60時間以下にする、年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入する、などです。
助成金は、最大480万円まで支給されます。支給額の上限は、事業規模や成果目標の達成状況などによっ変動するため注意が必要です。
- 成果目標1から3の上限額および賃金加算額の合計額
- 対象経費の合計額×補助率3/4
- 常時使用している労働者数が30人以下かつ、特定の取組にかかった金額が30万円を超える場合の補助率は4/5
参考サイト:働き方改革推進支援助成金
業務改善助成金
出典:業務改善助成金
業務改善助成金は、業務内容の改善や生産性向上を目的として、設備投資を行った事業者に支給されるものです。助成金を受け取るには、事業所内の最低賃金を一定以上引き上げなければなりません。最低賃金の引き上げ額が大きいほど、受けられる助成金の上限金額も高くなります。
コース区分 | 事業場内最低賃金の引き上げ額 | 引き上げる労働者数 | 助成上限額 右記以外の事業者 | 助成上限額 事業場規模30人未満の事業者 |
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30円コース | 30円以上 | 1人 | 30万円 | 60万円 |
2〜3人 | 50万円 | 90万円 | ||
4〜6人 | 70万円 | 100万円 | ||
7人以上 | 100万円 | 120万円 | ||
10人以上 | 120万円 | 130万円 | ||
45円コース | 45円以上 | 1人 | 45万円 | 80万円 |
2〜3人 | 70万円 | 110万円 | ||
4〜6人 | 100万円 | 140万円 | ||
7人以上 | 150万円 | 170万円 | ||
10人以上 | 180万円 | 180万円 | ||
60円コース | 60円以上 | 1人 | 60万円 | 90万円 |
2〜3人 | 90万円 | 120万円 | ||
4〜6人 | 150万円 | 190万円 | ||
7人以上 | 230万円 | 230万円 | ||
10人以上 | 300万円 | 300万円 | ||
90円コース | 90円以上 | 1人 | 90万円 | 150万円 |
2〜3人 | 150万円 | 240万円 | ||
4〜6人 | 270万円 | 290万円 | ||
7人以上 | 450万円 | 450万円 | ||
10人以上 | 600万円 | 600万円 |
※10人以上の上限額区分は、<特例事業者>のみが対象
助成率は、最低賃金額によって適用される割合が異なります。
- 900円未満:9/10
- 900円以上950円未満:4/5、一定の生産要件を満たした場合9/10
- 950円以上:3/4、一定の生産要件を満たした場合4/5
助成率の適用要件に含まれる生産性要件とは、助成金の支給申請を行う時点における生産性の伸び率のことを指します。具体的には、会計年度の「生産性」が3年度前と比較した際に、1%~6%以上伸びているかという点です。
支給要件をすべて満たすと、最大で600万円の助成が受けられます。
参考サイト:業務改善助成金
このように、国や自治体ではさまざまな補助金・助成金制度を運用しています。補助金・助成金を活用してPOSレジを導入すれば、導入費用を大幅に抑えられるでしょう。
POSレジ導入に補助金・助成金を利用する場合の注意点
POSレジ導入にあたり、補助金・助成金などの支援制度を活用する際には以下の点に注意が必要です。
申請期間に注意する
POSレジを導入するにあたり、補助金・助成金制度を利用する際は、申請期間に注意しましょう。制度によって申請期間が異なるため、常時申し込める制度ばかりではありません。
申し込み期間が短いものも多く、期間をすぎると申請できなくなります。補助金・助成金を利用してPOSレジを導入したい場合は、早めに申請手続きを行いましょう。
申請書類に不備がないように確認する
POSレジ導入に補助金・助成金制度を利用するときは、申請書類に不備がないように注意が必要です。書類に不備があると、再度申請手続きをやり直さなければならず、間に合わなくなる可能性があります。
場合によっては申請が通らず、支給の対象外と判断される可能性があるため、申請方法をチェックした上で必要書類は揃っているか、事業計画書の記載内容に間違いがないか必ず確認しておきましょう。
重複利用は推奨できない
基本的に、同じ事業の同一の設備(POSレジ)の導入に関して、補助金と助成金を併用することは推奨できません。併用できないと明記されている制度もあるため、事前に確認しておきましょう。
POSレジを提供している事業者によっては、補助金や助成金を利用した導入のサポートを行っているところもあります。不安な場合は、POSレジ事業者に相談したり、補助金申請代行サービスなどを活用するのもおすすめです。
補助金・助成金制度を利用せずにPOSレジの導入費用を抑える方法
補助金・助成金制度を利用せずに、POSレジの導入費用を抑えるには、レンタルやサブスクサービスを活用する方法がおすすめです。
レンタル・サブスクサービスを活用すれば、月額数千円~3万円ほどでPOSレジを導入できます。ただし、長期的に利用する場合は購入した方がトータルコストは抑えられるため、よく検討して利用する必要があります。
また、タブレット端末などを所持しているのであれば、クラウド型POSレジを導入するのも選択肢の1つです。レシートプリンターやバーコードリーダー、キャッシュドロアなどの周辺機器のみ導入すれば良いため、大幅にPOSレジの導入コストを削減できます。
まとめ
POSレジの導入に利用できる補助金・助成金制度は、豊富にあります。しかし、制度ごとに詳細な適用条件が設定されているため、条件をすべて満たしていなければ利用できません。
POSレジを販売、レンタル提供している事業者の中には、補助金適用を視野に入れた導入方法に対応しているところもあります。
具体的にどのような導入サポートが受けられるのか、比較検討してみるのもおすすめです。もし、補助金・助成金制度の支給対象外になっても、レンタルやリース・サブスクを活用すれば低コストでPOSレジを導入できます。