大分県は日本人にとってだけでなく、訪日外国人にとっても人気の観光地です。インバウンド対策の重要性が叫ばれるなか、大分県ではどのようなインバウンド対策を行っているのでしょうか。
本記事では、大分県が推進しているインバウンド対策や独自の施策、課題について解説します。
大分県が進めるインバウンド対策とは?
本項では、大分県が進めているインバウンド対策について解説していきます。
多言語対応の案内板・パンフレットの整備
大分県では、訪日外国人観光客の利便性向上を目的に、案内板やパンフレットの多言語化を積極的に進めています。
主要観光地や公共施設において、英語、中国語(繁体字・簡体字)、韓国語、タイ語などに対応した案内表示を整備し、視覚的に分かりやすいデザインを採用しています。また、2025年3月には、多言語観光ウェブサイト「Visit Oita」がリニューアルされ、各言語での観光情報提供が強化されました。
観光案内所・交通機関での外国語対応強化
大分県内の観光案内所や交通機関では、外国語対応の強化が図られています。例えば、JR別府駅の「WANDER COMPASS BEPPU」では、英語、中国語、韓国語に対応できるスタッフが常駐し、訪日外国人観光客への案内サービスを提供しています。
また、観光案内所のスタッフによる多言語対応の取り組みが評価され、日本政府観光局(JNTO)から表彰を受けるなど、サービスの質の向上が進められています。
キャッシュレス決済の導入と推進
大分県では、観光客の利便性向上と地域経済の活性化を目的に、キャッシュレス決済の導入と推進を進めています。別府市では、公共施設の使用料支払いにキャッシュレス決済を導入し、観光客がスムーズにサービスを利用できる環境を整備しています。
また、竹田市役所では、証明書発行手数料の支払いにキャッシュレス決済を導入し、行政手続きの利便性向上を図っています。
大分県の観光資源とインバウンドの現状とは?
続いて本項では、大分県の観光資源とインバウンドの現状について解説します。
全国有数の温泉地「別府・湯布院」が主力コンテンツ
大分県は「おんせん県」として知られ、別府温泉と湯布院温泉はその象徴的存在です。別府温泉は源泉数・湧出量ともに日本一を誇り、地獄めぐりなど多彩な温泉体験が楽しめます。
湯布院温泉は、自然豊かな景観と洗練された旅館が魅力で、特に女性やカップルに人気です。これらの温泉地は、国内外から多くの観光客を惹きつける大分県の主力観光資源となっています。
訪日外国人の動向と課題
2025年3月の大分県内の宿泊客数は約53万人となり、統計開始以来初めて50万人を超えました。このうち外国人宿泊客は約11万6,000人で、前年同月比5.9%増加しています。
韓国からの観光客が半数以上を占める一方、欧米圏からの観光客も前年の1.5倍近くに増加しています。しかし、観光消費額や平均宿泊日数が全国平均より低いといった課題もあり、今後の対策が求められています。
アジア圏を中心とした外国人観光客のニーズ
大分県を訪れる外国人観光客の多くはアジア圏からで、特に韓国からの観光客が約6割を占めています。彼らのニーズとしては、温泉や自然、美食体験などが挙げられます。
また、SNSを活用した情報発信や多言語対応の強化が求められており、これらのニーズに応えることで、さらなる誘客が期待されています。
温泉観光地ならではの大分県の独自施策
本項では、温泉観光地ならではの施策について解説していきます。
「おんせん県」としてのプロモーション戦略
大分県は、源泉数・湧出量ともに日本一を誇る温泉資源を活かし、2013年から「おんせん県おおいた」のキャッチフレーズを掲げ、積極的なプロモーションを展開しています。
2025年には「日本一のおんせん県おおいたツーリズム戦略」を策定し、持続可能な観光地域づくりとデータマーケティングに基づく施策展開を推進しています。また、ユニークなPR動画やキャンペーンを通じて、国内外への情報発信を強化しています。
湯浴み文化体験や“温泉道”の国際展開
大分県では、温泉文化を体験型観光資源として活用しています。別府市では、地元の共同温泉「ジモ泉」を巡る「別府八湯温泉道」が人気で、88湯を巡るスタンプラリー形式で温泉文化を楽しむことができます。
また、星野リゾート「界 別府」では、湯守りや温泉道名人から学ぶ「冬の湯巡り滞在プラン」を提供し、外国人観光客にも日本の湯浴み文化を体験してもらう取り組みを進めています。
外国人向けマナー啓発と受入側の教育支援
大分県では、外国人観光客の増加に伴い、温泉マナーの啓発と受け入れ体制の強化を図っています。例えば、宇佐市では外国人向けに温泉マナーを説明するポスターを作成し、公共の場でのマナー向上を促進しています。
また、大分市の観光専門学校では、ネパールやスリランカ、インドネシアなどからの留学生が日本語やビジネスマナーを学び、観光産業での活躍を目指しています。これらの取り組みにより、訪日外国人が安心して温泉を楽しめる環境づくりが進められています。
大分県が抱えるインバウンド対策の課題とは?
続いて、大分県がインバウンド対策について抱えている課題を解説していきます。
宿泊施設の人手不足と質の確保
大分県では、観光需要の回復に伴い宿泊施設の人手不足が深刻化しています。
この状況に対応するため、県は「経営力強化加速化事業費補助金」を通じて、宿泊業の人手不足対策やユニバーサルツーリズム促進事業への支援を行っています。 また、別府市では、旅館業界がスキマバイトを活用するなど、柔軟な雇用形態の導入も進められています。
欧米圏への情報発信力
大分県は、韓国や台湾などアジア圏からの観光客が多い一方で、欧米圏への情報発信力が課題となっています。2025年の調査では、別府を訪れた外国人観光客の約8割が欧米豪出身であり、特にアメリカ、オーストラリア、ドイツ、フランスからの訪問者が多いことが明らかになりました。
これを受けて、県は多言語公式SNSの運用やデジタルマーケティングを強化し、欧米圏への情報発信を推進しています。 また、英字メディア「Tokyo Weekender」などを活用したプロモーションも展開しています。
参考:glidejapan
まとめ
大分県が推進しているインバウンド対策や独自の施策、課題について解説しました。温泉地として多数の観光地を誇る大分県では、観光案内所や交通機関の外国語対応強化、決裁方法を多様化していくといった対策が重要となります。